チンクエテッレ帰国後談話1・・・アパートメントで起きた最初の難関

c0101985_0175535.jpgこちら、モンテロッソのアパートの門です。
VENDERSIの札は、これが売り物件であることを示しています。買い手がつくまで、貸してるんですね。いいことです。

アパートメントについては現地からもレポートしましたが、外観はこのような感じて、3階建ての建物の右半分の1階のみを私たちは借りた形になっていました。
左半分はVENDERSIの札は出ていなかったし、たくさんの洗濯物が干してあったり複数の人が出入りしたりしていたので、おそらく家族が住んでいるのでしょう。
夜遅くになると大きな声で喋るのがけっこううるさい家族で、といっても22時、23時というのはイタリアではそれほど遅い時間ではないので、ごく普通の家族の会話なのでしょうが、寝入りばなをちょっと邪魔される感はぬぐえない日もありました。
それがまた生活感があってよかったりするのですが。

テラスは手前にひとつ、奥にひとつありましたが、奥の部屋にキッチンがあったのと、椅子とテーブルの数が奥の方が人数分揃っていたので、食事のときは奥のテラスを使っていました。

成田発の飛行機もほぼ定刻にミラノに到着し、ミラノからのIC(インタc0101985_0321187.jpgーシティ)も定刻に発車し、定刻にモンテロッソに到着し、こわいほど順調にここまできていたのですが、そうそう上手く行くはずがないのがイタリアの旅というものです。

最初の難関はこのアパートメントで勃発しました。



モンテロッソの駅に、アパートメントのオーナーさんが私たちを迎えに来ることになっていて、私たちは列車の中で、オーナーさんはどんな人だろうと話していました。
おじさんだと思う、年配のおばさんだと思う、キレイなお姉さんだと思う、など、個々思い思いに想像していたオーナーさん像がありましたが、駅の出口で私に
"AQUA MARINA(アパートメントの名称)? Agurumi?"と声をかけて来たのは、短パンに上半身裸、筋肉隆々、つるつるの丸刈りにサングラスをかけた、いかつい40代後半から50代前半くらいとおぼしき男性でした。
一応「おじさん」が正解ではありますが、その「おじさん」像は想像とは全く違うものでした。

一瞬、私たち…少なくとも私はひるんでしまいましたが、すぐさま彼が、見かけとは違うフレンドリーな態度で私たちと接してくれたことで、「大丈夫かも」と思えました。
彼は携帯でタクシーを呼び、私たちと荷物をのせると、自分は歩いて行くから、私たちはタクシーの運転手が連れて行ってくれたところで待っているように、タクシー代は自分が払うから心配いらない、という旨のことを言いました。

タクシーを使うなんて、思ったよりアパートメントは駅から遠いのか?という不安と、でもオーナーさんは歩いて行くんだかにそんなに遠くはないはずだ、という思いが私たちの中を駆け抜けました。タクシーはほどなくアパートメントに着き、運転手さんはさっさと帰ってしまい、数分でオーナーさんがやってきました。
たいした距離ではなさそうです。荷物があるからタクシーを呼んでくれただけでした。
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オーナーさんはアパートメントの使い方を説明したあと、携帯電話の番号を私たちに教え、何かあったら電話するようにいい、実際につながるかどうか、私のiPhoneから実際に掛けてみて、着信があったのを確認して帰って行きました。

今回の登場人物は先輩A、同僚I、後輩T、後輩M、そして私の5人です。
暑がりの先輩Aに、ひとりでいちばん手前の部屋に入ってもらいました。思う存分冷房を使っていただけます。
後輩Tと後輩Mに真ん中の部屋、そして寒がりの同僚Iと私がキッチン付きのいちばん奥の部屋に入ることにしました。これで冷房に凍える心配はありません。

到着当日はモンテロッソの街を散策することにしていたので、荷物をおいて私たちは早速出かけようとしましたが、ここで困ったことが起きました。

同僚Kと私の部屋の鍵がかからないのです。

鍵穴に鍵は入ります。ドアを開けたまま鍵を回すと、カッチャンと音がしてちゃんと鍵の仕組みは機能するのですが、ドアを閉めると、建具c0101985_102992.jpgの方の鍵が入り込む穴がへしゃげて狭くなっていて、どう考えても物理的に締まるわけがない状態なのです。
みんなでかわるがわる試しましたが、無理でした。

とりあえず、貴重品は別の部屋に置いてでかけてしまうという手もありましたが、いずれにしろこれではさすがにこのまま4日間目をつぶるわけにはいきません。

さっき確認した電話を、早々に使うことになってしまいました。
オーナーさん、ついさっき帰ったばっかりなのに。

えー、電話・・・?
そういえば、アマルフィのアパートメントに泊った時も、オーナーさんに、アパートメントを出る時間を前日に電話で知らせる、というストレスフルな課題に直面したことがありました。
当時は公衆電話からで、公衆電話の使い方もよくわからず、留守電メッセージの残し方もよくわからず、イタリア語もよくわからず、胃が痛くなるような思いをしたことを覚えています。
でもあれは2004年の話です。
少しずつではあるけれど、あれからもずーっとイタリア語を勉強し続けて来たのです。特に今回は、できるだけメンバーに迷惑をかけないで済むように、NHKイタリア語会話だけではなく、iPhoneアプリもいくつも使ってイタリア語の勉強を頑張ってきたのです。
大丈夫、私はもう電話でだってイタリア語が話せる! と、やや乱暴な自己暗示をかけて、私はiPhoneのリダイヤルを操作しました。

正しく喋る必要はないのです。通じればよいのですから。コミュニケーションとはそういうものです。
私は頭の中で前もって単語を並べることなく、考え過ぎずにシンプルに伝えたいことを伝えよう、と覚悟を決めていました。通じるかどうかは喋ってみなければわからないのですから。

オーナーさんは、電話には出られないからメッセージを残しておくようにと言っていたのですが、そのときは電話に出てくれました。

"Sono Agrumi. Non posso usare la chiave di una camera."---アグルーミです。ひとつの部屋の鍵が使えません。
オーナーさんは何かたくさん喋りましたが、私はそれらを聞き取れる単語をつなげてなんとか理解し、とにかく「鍵がかからない」という意味合いの知っている限りの表現を繰り返しました。
部屋の一つに鍵がかからないことは通じたようで、オーナーさんが
"Quale camera?"---どの部屋?
と言うのがはっきり聞き取れました。が、どの部屋って、部屋番号もついてないし、なんて言えばいい?
いちばん奥の部屋? でも「奥」ってなんて言うの? in fondo? いや、それは「突き当たり」だ。でもそれでも通じるか? わからない、もっと確実なこの部屋の特徴は何だ? …あっ、そうだ! 
"La camera con cucina."---キッチンのある部屋。

オーナーさんに、私が伝えたかったことは伝わりました。しかし彼は、自分は今すぐそっちに行けないから、そのままにしておいて、という意味のことを言いました。lasciare(残す、置いておく)とapre(開ける)という単語が聞き取れました。
やっぱりそう来たか・・・と思い、私は
"Ho capito,dopo."---わかった、後で
と言い、その「後」がいつなんだかわかんないけどまあいいや、とにかく今じゃないったことだ、と思い電話を切りました。

そしてみんなに「開けたままにして出かけろってー。」と結果を報告したのですが、ふと気付くと、iPhoneから"Agrumi,agurumi!"と叫ぶ声が聞こえています。
日常的にほとんど電話の機能を使わない私は、電話を切ったと思っていたけど切れていなかったのです。
あわててiPhoneを耳に当てると、オーナーさんは、今行くから待っていろ、というようなことを言っています。
"Aspetto?"---(私は)待っている?
"Si,si,aspetti."---そうそう、(君は)待ってて

とりあえず、オーナーさんの到着を待つことになりました。「今すぐ行けない」が数秒で「今行く」に転じる彼の本職はなんであろうか…と考えながら。
しかしながら、「今」とはいつのことなのか。

c0101985_2161287.jpg私は、オーナーさんがすぐに来る可能性も、しばらく来ない可能性もあると考えました。そこで、ビーチに行きたがっていた同僚Iと後輩Tと後輩Mに、水着に着替えて海で遊んでくることを勧めました。
みんなでただ待っていても貴重な時間がもったない。私自身はビーチにあまり関心がなかったので、街歩きの後にビーチの予定でしたが、先に行きたい人だけでもビーチに行ってもらった方がよいと思ったのです。

3人は、ビーチに行く準備にとりかかりました。同僚Iは「そうこうしてるうちにオーナーさん来てくれて、みんなで一緒に街に出られると言いね」と言いながら水着に着替えます。
そして、水着の上に簡単な服を着て、3人が門を出ようとしたところ、オーナーさんがやってきました。

やった、間に合った―。みな歓声をあげました。

私は建具を指して
"Stretto,stretto!"---狭い
と言いました。

オーナーさんはわかった、わかった、という様子でテラスの倉庫のようなところからでっかいペンチのようなものを出してきて、グニニニニッと建具の鍵の穴を広げます。
こんなに簡単にこじあけられる鍵を修理する意味があるのだろうか・・・という考えが頭をよぎりましたが、深く考えないことにしました。
なぜなら、ここはイタリアだから!
いや、イタリアだからこそ、しっかりした鍵が必要なのでは?
いや、いいのです、ここはイタリアだから!

グニニニニッと広げて鍵を回す、グニニニニッと広げて鍵を回す、3回目か4回目で、カッチャンとめでたく鍵が閉まりました。

"Grazie!"---ありがとう
・・・しかし・・・昨日まで、この部屋はどうなっていたのだろうか。

"Ha capito il mio italiano?"---私のイタリア語はわかりましたか
"Si,perfetto,perfetto."---ああ、完璧、完璧

そしてオーナーさんは急いでまた去って行きました。

この出来事は、結果的に私たちの行動を効率良くしてくれました。
まずは街へ出てみよう、時間があったら一度アパートメントに戻って着替えてビーチに出かけよう、というのが私たちの計画でしたが、海に入りたい人は水着を着てしまったことで、街歩きの後アパートメントに戻ることなく直接ビーチに行くことができました。

先輩Aはいつのまにかどこかで果物を買ってきていて、3人が海に入っている間、私たちふたりは果物を食べながら待っていました。せっかくなので、私も少し波打ち際で遊びましたけど。


この旅、もう何が起こっても乗り越えられる! 何か漠然とした満足感と安心感のようなものに包まれる私でした。
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by agrumi | 2012-07-13 00:27 | チンクエテッレに住みに行こう!


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